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国土交通省四国地方整備局中村工事事務所
第三部 流域圏の課題と展望
第二章 とこしえに住みつなぐ

 今から20年前、消費者グループとして「中村くらしを見直す会」(代表:川村祐子)が発足した。「はじめの頃は目新しい活動だっただけに、周りには理解されにくかった」と川村さんは当時を振り返る。
 食や環境に関する警告は20年以前から出ており、それに気づいた川村さんたちは何か始めなければと思ったという。このごろの食べ物何か変、という思いから活動を始め、その中から自然に環境を考え始めることになる。やがて、エネルギー・文化・教育と、自分たちの生活に関わるあらゆることにその活動がつながっていった。会のスタート以来、消費者に食の状況をありのまま伝えたり、この国の食料の自給率の低
さや食の安全について伝えてきた。
 3年前、中村市農林課・生産者・消費者が集まって地元に「環境にやさしい農業のための研究会」ができた。この会の生産者がつくった物が、9月から始まった学校給食の食材に「優先的」に納入されることになった。給食に無農薬の食品が多く取り入れられるようになる。このことは、多くの消費者が重視する経済性などの価値観を超えて、命を考えて子どもたちの食を選択していることになり、大きな第一歩だと考えている。中産間地域の方が多いので、現在は生産が追いつかず、25%の食材しか供給できていないが、生産者と共に今後増やして行きたい。
 それと前後して「くらしを見直す会」も様々な活動に積極的に取り組み始めた。一方で数年前に「杜を育てる会」という組織ができ、下流に住む私たちは水源に目を向けるという意味から四万十川の源流域梼原町での植林を行っている。また、紫外線に関する学習を学校授業やPTAなどと一緒に企画し、他市町村などでも数多く実施した結果、プールサイドのテント張りや四国で初めて中村市立保育園で耳たれ帽子が採用されるという成果をもたらした。
 これらの取り組みをきっかけに、行政や様々な活動に係わる人たちと企画を一緒にやる”ネットワークの広域化”の大切さを実感する。現在、高知県が支援して3月29日、30日に行われる環境イベント「四万十・黒潮エコライフフェアー」事務局として活動を進めている。
 川村さんはこれまで、「イベント」の開催については肯定的ではなかったという。大量のゴミが出るし、主催者の意向とは裏腹に物産展だと誤解されやすい。しかし、地域で活動する様々な分野の人々が情報を共有し、得意分野を発揮しあえば、流域全体の課題に取り組むきっかけになるのでは、と考え始めた。地域のこと、環境のこと、自分たちのライフスタイルのことを一緒に考えていける人たちと、ささやかでも正直に暮らす生き方を探り続けたい。イベント準備の段階では、アイデアがでないまま、何ヶ月も動けずにいた時期もあった。しかし、地域に出向けばそこには人がいると分かったときから、自然体で動けるようになったという。
 くらしを見直す会も5年間程、初期の思いから離れていた苦しい時期があった。やめなさいと言われたことも、やめようかと思ったこともあった。そんな時もやはり、人が大きな支えとなった。基本は人を信頼することにある。志をもった人が地域全体に広がっていくために、いろいろな分野をつなげる活動をもっとやっていきたい。最終的な町の姿を思い描きながら、「まずは自分が」という思いで小さなことから始める。環境面は危機的状況にあるが見えにくく、対応することをみんな求めていても行動はなかなか変えにくい。私たちはそんな人たちの後押し役になりたいと川村さんはいう。
 エコはハートのつながり。他を思いやれなくなったらうまくいかない。今までは自分たちはこうしたらいいじゃないかと言える力が足りなかったが、専門家とつながり、学んで、また自分達も成長し続けたい。これからも多くの人々とネットワークをはぐくみながら、この会がみんなを応援していけるささやかな場所になればと話す。イベントはネットワークをつくり、力をつけていくきっかけの一つ。これからも形を変えながら毎年続けていきたい、と次の目標に向かって思いはすでに動き始めている。

19955月発刊